理学療法士の日常を盛りに盛って好き勝手に書いたフィクションです。
田舎のクリニックの朝は、普通である。
8時過に職場について8時30分から外来スタート!
そう、普通である。
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平日の午前中は比較的年配の患者さんが多い、これも普通のこと。
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年配の患者さんに多い悩みが膝の痛みであることも普通のこと。
そして、現在の季節は冬
急に寒くなってお亡くなりになる方が増えるというのも、よく言われていること...
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そして誰かの不幸があった場合、お通夜は自宅で行われることが多い田舎では
正座が出来なくて困る方がいることも、少なくない。
まさに今日最初の患者さんは膝が痛くて来院され、歩くことは出来るようになったけど正座が出来るようになりたいと願っていた大村のおばあちゃん。
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「この間、同じ地区の方のお通夜に行ったときに正座が出来て助かったわ」
「そうなんですか、ついにやりましたね!」
「これもフジイさんの熱心なリハビリのお陰ね」
「いえいえ、大村さんが頑張って3か月も通い続けてくれたからですよ」
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3か月前、大村さんは歩くときに右膝の内側が痛い、ということで
外来を受診され、変形性膝関節症の診断で関節への注射とリハビリが始まった患者さんだ。
治療を開始から1か月ほどで歩く時の痛みは良くなってきて喜んでくれてはいたのだが
「歩くのは楽になってきて、少し欲が出てしまったのだけど」
「欲・・・ですか?」
「正座が出来るようになるといいなぁ、と思って」
「正座ですかぁ」(たぶんできると思うけど)
「診察の時に先生に言ってみたら、正座は無理って言われたんだけどね」
「正座は膝にも良くないからしなくて良いって・・・」
「そうなんですねぇ、ちょっとどのくらい曲がるか確認しましょうか」
大村さんの膝を曲げてみると確かに正座が出来るほどは曲がらず、膝のお皿の周りに痛みが出た。
大村さんの膝の曲がる角度は120°ほどで正座するために必要と言われている150~160°には遠く及ばない。
120°ほど曲げた状態で確認してみると膝蓋骨の動きが制限されていることが分かった。
膝が曲がるときに膝蓋骨も一緒に動いていくんだけど、ただまっすぐ動くわけではなくて膝が曲がる角度によって内側とか外側にズレながら動くので、そういった動きを作っていくことで膝の曲がりを良くすることが出来る。
そのために理学療法士が使うテクニックは関節モビライゼーションだ。
私はこういったテクニックの専門教育も受けているので、それが出来ちゃうんですよね。
まさに田舎の理学療法士の鑑でしょ!
それから約2か月間、週に2,3回の通院で治療を続け正座が出来るようになった大村さんは
地区の方のお通夜で正座を披露し、「え!大村さんは正座が出来るの!」と他の地区の皆さんに褒められ上機嫌で来院されたわけです。
他の方のお通夜での出来事なのに、「良かったですねぇ」と喜び合う大村さんと私。
3か月通ってきて感謝もしてくれているのに「フジイさんのお陰よ~」と名前を間違ったままの大村さん。
これも良くある病院の光景だったりします。
本日のキーワード
「関節モビライゼーション」「膝蓋骨モビライゼーション」「Patella mobilization」
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