田舎の理学療法士の日常を描いたフィクションです。
さぁ、今日まで頑張れば明日は休みだ!
しかも今日は午前中だけの診療だからなぁ
お昼は何食べようかなぁ
お取り寄せのハンバーグあったなぁ、楽しみぃ~
などど考えながら更衣室を出て、リハ室へ。
電気治療器などの物理療法の準備を終えると、本日一番目の患者さんが入ってきた。
「おはようございます、ちょっと早かったですか?」
「おはようございます、大丈夫ですよ、こちらの治療台へどうぞ」
朝一でやってきたのは腰部椎間板ヘルニアの浅井さん、パート勤務で介護職をされている患者さんだ。
「大したことはしてないのに、今朝も腰が痛くて起き上がるのに少し苦労しました」
「朝は背が高くなるっていうじゃないですか、あれって寝ている間に重みがかかってない椎間板が水分を含んで膨れてる影響もあるらしいんですよ」
「あぁ、確かに朝と夕方では1~2㎝身長が変わることもあるって聞いたことあります、そういう理由だったんですねぇ」
「なので、浅井さんのように椎間板に傷が入って中身が飛び出しかけてる状態だと、水を吸った椎間板がさらに飛び出そうとしているから朝は痛みが強いことが多いんですよ」
「じゃぁ、朝は特に気を付けないとね」
「そうですね、朝一のくしゃみでヘルニアが悪化して動けなくなる人もいますからね」
「怖いですねぇ」
「普段から無理なことはしてないんですけどねぇ」
「介護の仕事もパートだから食事介助やおむつ交換くらいで、利用者さんを抱えることはしてないし、お休みの日も家で映画見たりたまにドライブ行くくらいですし」
「なるほどぉ、実はそれって椎間板にとってはとても負担が大きい生活習慣なんですよ」
「えっ」
「椎間板内圧の変化、とかで検索してもらうと出てくると思うんですけど、昔々の実験報告では、座っている姿勢って普通に直立しているときの約1.5倍ほど腰の椎間板に負担がかかるんです」
「さらに、座って前傾すると1.8倍!、立って前傾して荷物を持つと2倍以上!の負担がかかるんです」
「私は腰に悪いことばかりしていたんですねぇ・・・」
「そんな浅井さんにもう一つお知らせが・・・車の振動って4ヘルツくらいらしくて腰の椎間板を壊しやすくする周波数と言われてまして、座って車に揺られるのは椎間板にとってはかなりの負担になることがあるんです」
「重いもの抱えてないから無理はしていないつもりだったけど・・・だから腰が痛くなったんですねぇ、もう映画鑑賞もドライブもやめないといけませんね」
「いくつか気を付けていただければ大丈夫ですよ。」
「食事介助では同じ姿勢で座り続けるのは同じ部位に負担がかかり続けるので、たまには腰をゆっくり少しだけ曲げたり伸ばしたり、立ち上がって歩いたりして負担を和らげたりできますし、おむつ交換でも前かがみの持続時間を短くしてこまめに背筋を伸ばすことを作業の間に挟んでいくと良いですよ」
「なるほどねぇ」
「映画鑑賞やドライブも一緒でたまには休憩して横になってあげると椎間板の負担が軽くなりますし、腰が丸くならないように腰と背もたれの間にタオルを入れたり市販のランバーサポート用のクッションなども利用してみると良いですよ」
「腰は軽く前弯していると椎間板だけでなく後方にある椎間関節という骨でも体重を支えてくれるようになるので椎間板の負担が減るんですよ」
「あと、車で遠くまで行くときには車で寝る用のクッションとかもあるみたいですよ」
「そんなものまであるんですね、知りませんでした。足の伸ばして寝れると楽でしょうね」
「職場でもらったコルセットがあるんですけど、コルセットは使わない方が良いんですか? よくコルセットを使うと筋肉が弱くなるとか言われるじゃないですか」
「確かに手術の後に型をとってつくる分厚いブラスチックのコルセットだとその可能性もありますが、市販の軟らかいコルセットでは筋力が落ちるほど体幹を支えきれないので大丈夫ですよ」
「そうなんですか」
「コルセット着けても腰を動かせますよね」
「はい、締まった感じはあるけど動かせますね」
「動かせるってことは完全に固定されてないってことですから筋力は落ちないんですよ、むしろ軽めに固定してあげた方が痛みが減るので筋肉も働きやすくなりますよ」
「じゃぁ、仕事中はコルセットをしっかり巻いた方が良いですね」
「きつく巻きすぎると血液の流れが悪くなってかえって不快になりますので軽めで良いですよ、巻いてないよりも少し楽に感じるくらいで良いと思います」
「知らず知らずに体に悪いことしちゃうんですねぇ・・・」
「そうなんですよねぇ、良かれと思ってやってたことでも裏目に出ることってありますよねぇ」
「でも、今回のことに気を付けていただけるだけでも治りが早くなると思いますので」
「いつまでも治らないから落ち込んでたけど希望が見えました!有難うございます」
「ある程度、椎間板の炎症が治まったら地獄の筋トレも待ってますのでお楽しみに」
「・・・頑張ります。先生、かわいい顔なのに怖く見えますよ」
「一緒に頑張りましょう!」
「お手柔らかにお願いします。というか『かわいい』は否定しませんでしたね」
「そうですね、がんばりましょう!」
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