小説:田舎でPT⑩隠されてた病

田舎の理学療法士の日常を描いたフィクションです。

今日のお昼のデザートは1週間かけて作られるというチョコレートマカロン!

この濃厚さ、まさに至福~!

これで午後からも頑張れます、感謝!

そして午後一番目の患者さんは、頚髄症で手術した酒井さん。

一本杖を使っての歩行だが安定していないため転倒しないように奥様が左脇を支えてくれている。

「定年したら夫婦で旅行しようと言ってたのに、こんな体になってしまって」

老後を楽しみにしながらお仕事を頑張ってきたのに、思い描いてたものとは違ってしまい落ち込んでおられる。

それはそうだよなぁ・・・、手術も終わったからなんとか元気に歩けるようになってほしいんだけど・・・

頚髄が障害されていたため首から下が不完全ではあるもの麻痺してうまく動かせない状態だったから手術で頚髄に負担がかからないようになってるはず・・・なのに・・・

なぜか手術後2か月経っても麻痺が回復してこない、それどころか筋肉の萎縮が進んでいるように思える。

「ここでのリハビリは週に一回ですが、家でも何か運動はされてますか?」

「家に閉じこもらないように、近くにジムに週に2回通ってます」

「なるほど、ジムではどんなトレーニングしてますか?」

「加圧トレーニングっていうのをやってます、軽い運動でも効果があるらしいですよ」

加圧トレーニングかぁ、神経障害がある場合にはもしかしたら逆効果かもなぁ

血管だけじゃなくて神経も圧迫するから負担が大きいのかも

「もしかしたらなんですけど、神経も締め付けてしまうから今は少し負担が大きいかもしれませんねぇ」

「だからですかね、トレーニングの後はしびれて歩けなくなるんですよ」

「そうですねぇ、加圧トレーニング自体は効果的なトレーニング法だと思うんですけど、今はちょっと負担が大きいのかもしれませんね」

「そうですね、少しお休みします、その間こちらのリハビリを週2回に増やしていただくことはできますか?」

「少し遠方でしたので週1回と家での自主トレーニングで様子をみてましたけど、そういったことであれば来週から週2回に増やしましょうか」

「そうしていただけますか」

1か月後、酒井さんの筋肉の萎縮は進み続け、歩ける距離も短くなってきた。

「最近、食欲はどうですか?」

「朝はトーストが好きで食べていたんですが、最近はご飯が増えました」

と奥様が答える。

「それはどうしてですか?」

「なんか、パンは喉に詰まって食べにくいらしくて」

パンが食べづらい・・・それは国家試験にも出るくらい典型的な症状だった。

当たっていてほしくないけど・・・

「酒井さん、舌を出してみせていただけますか?」

「べー」

「ありがとうございます」

舌も萎縮してきてるなぁ・・・

「最近、話している内容が聞き取りづらいときがあるんですよ、私の耳のせいにされるんですけどね」

と奥様

「あはは、それはいけませんね」

その日のリハビリを終え、担当医へ直行

「お医者様、ちょっとお話が」

「理学療法士様、今回はどのようなご用件でしょうか?」

「外来の酒井さんについてご相談が」

「あぁ、頚髄症の術後の方ね、あまり経過が良くないねぇ、CKの値も高いし」

「さらに舌の萎縮もあるんですよね、頚髄症では舌は萎縮しないですよね」

「舌にも萎縮?、もしかして・・・ALS?」

「あまり良いことではないんですけど、ALSつまり筋萎縮性側索硬化症の疑いがあります」

「それで術後の経過が良くないのかぁ、早速、神経内科へ紹介しますね」

「宜しくお願いします、では」

「今日はジュースは良いんですか?」

「今日はいいです・・・」

理学療法は万能じゃないんだよなぁ、分かってるんだけど・・・

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